今年お亡くなりになられたひろさちやさんの本です。
人が生まれてから死ぬまでの過程というのは、現実世界で見ることができるし、様々な仕組みや理屈について科学的に検証されているので、おおよそ把握することができます。しかし死の一歩先の話になると、全くわかりませんし、いろいろなことを言う方がいますが、何一つ立証されていません。
仏教の葬儀では、僧侶が法話を行うことがあります。葬儀に際し、仏教への理解や実践を深めていけるようなお話がなされるのですが、「死後の世界」の話をすることがあります。「これから故人はどこへ向かってどうなるのか」というお話ですが、それは生きている誰もが見たことのない、経験したこともないお話です。
葬儀に参列した人だけでなく、人類が知性を得て以来数万年に渡って人々を悩ませてきた関心事です。仏教だけでなく、世界の宗教の出発点が、この死に対する未知の恐怖なのではないでしょうか。死んだらどうなるのか。現実を生きる私たちに見えるのは、生命活動が停止した肉体のみです。「ただ白骨のみぞ残れり」ということしかわかりません。わからないから、想像します。何百年も、何千年も、何万年も想像し続けます。そして宗教がそれらを体系的にまとめて、死後の世界を創り上げました。
全部フィクションじゃないか、というのは簡単ですが、僧侶の法話に耳を傾けていると、話す人によって内容が微妙に違っています。死んだらどうなるのか、ものすごく気になるので、フィクションならフィクションで構わないので、仏教ではどのように体系付けられているのか知りたいと思うようになりました。様々な僧侶が書いた本がありますが、やはり皆さん自身の所属する宗派で体系付けられた話をしますし、そちらに偏ってしまいます。
おそらく釈迦が悟りを開いた時代の仏教では、死後の世界は今日ほど研究されていなくて、仏教を受け継いでいった世界中の僧侶たちが2500年かけて創り上げてきた死後の世界が、現在体系づけらrている「仏教の死後の世界」なのでしょう。あまり偏りのない、一般的な仏教に通じる「死後の世界のひと通り」を詳しく書いた本が読みたい。という欲求を満たすべく様々に本を読みましたが、やっとこれだと思ったのがひろさちやさんの「仏教 死後の世界 入門」という本でした。
死んだらどうなるのか、いや、一般的に仏教では死んだらどうなるとされているのかが、時系列に書かれています。また、死後の世界がどんな場所なのかも、図入りで細かく記載されています。難しすぎることと、事細かすぎることで、現実感は全くありませんが、ひろさちやさんの主観的な意見や感想が無くて、ただひたすら第三者として解説されているので、理解しやすいです。ただ、本当にこれがお釈迦様の教えの延長にあるものなのかと疑問に思えるものです。
変な話、ここまで事細かに世界観が規定されているのなら、ドラゴンクエストのようなシミュレーションゲームにできそうです。死後、体験するであろう世界や出来事を画面の中で巡るのは、面白い試みだと思います。死出の旅が勇者の冒険になるのなら、怖がることもないのかもしれません。
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