寺社探訪

寺社探訪とコラム

「荒川 百所巡礼 21」

埼玉県深谷市荒川付近を歩いています。花園ICが近いので、郊外型の大型量販店が並んでいます。では、今回も荒川に沿って歩いていきましょう。

目次

深谷市大里郡寄居町

荒川 百所巡礼 第160番 庚申塔

石像がふたつ並んでいます。中央のものは庚申塔のようです。風化してしまって分かりづらいですが、手が6本あるのがわかります。三猿も形がわかる程度ですが残っています。左は大黒天のようです。こちらもかなり風化しています。右には小さな祠があり、神道依代のようなものが祀られています。

こちらは彩甲斐街道ですが、花園IC周辺ですので、道路の幅が広く、大型店舗がロードサイドに並んでいます。

「お茶々が井戸」という史跡があります。説明文によると、鎌倉時代のお話なので、昔々のお話です。鎌倉時代には鎌倉に向かう道が整備され、いくつもの鎌倉街道と呼ばれた道がありました。ここもそのひとつだったようです。ふたつの説があり、ひとつはここにあった茶屋に「お茶々」という美人の娘がいて、鎌倉街道を旅する人々にお茶の接待をしていたという説。もうひとつは、ここにあった茶屋に「ちょう」という美しい娘がいて、評判だったという説。いずれにしても美人の娘がいてお茶屋が繁盛したということですね。

深谷市から大里郡寄居町に入りました。玉淀大橋の袂に来ました。文京区から長野県松本市を結んでいる国道254号線が走っています。東京では「川越街道」と呼ばれる道路です。江戸時代、この道は五街道ではありませんが、脇往還として多くの人々が利用しました。中山道をショートカットできるので、大名は通りませんが、庶民には人気の道だったそうです。

河口から92.6kmの玉淀大橋から見た荒川です。「かわせみ河原」という寄居町が運営しているキャンプ場があります。フリーサイトで車1台500円で入れますが、公共施設なので守るべきルールがきちんと決まっています。岩もゴロゴロしていて、さらに上流になってきた感じがします。

 

寄居町の中心部へ

荒川 百所巡礼 第161番 古峯神社

中小前田の大きな交差点で交通量の多い国道140号線から離れて、寄居町の中心部へ向かうとすぐに右側に富士塚と祠があります。富士塚には富士嶽大神という石碑が建っていますので、富士信仰の史跡ですね。祠の方は古峯神社とのこと。栃木県にヤマトタケルを祀ったパワースポットで有名な古峯神社がありますが、関係ありそうですね。

 

荒川 百所巡礼 第162番 岩崎延命地蔵

更に進んでいくと、同じ通り沿いに岩崎延命地蔵尊がありました。お堂の横に由緒が書かれていました。法厳浄眼禅人という僧が正徳3年(1713年)に、地元の名士の布施によって延命地蔵を安置する庵を建てたということです。現在のお堂は昭和39年に再建されたものです。

こちらが子守地蔵です。子育て地蔵とかと同じだと思いますが、地蔵菩薩はそもそも子どもを守護する菩薩様です。隣には馬頭観音の石碑がありました。


荒川 百所巡礼 第163番 稲荷神社

 

延命地蔵尊からほど近くに広場があり、広場の一角に赤い鳥居がありました。鳥居の左の祠は八坂神社と書かれていました。八坂神社は京都祇園の有名な神社で素戔嗚命を祀っています。赤い鳥居は稲荷神社ですね。こちらも京都伏見の有名な神社で、稲荷神を祀っています。

鳥居が連なる千本鳥居ではなく、のぼり旗が連なっています。こちらの方が奉納しやすいから、興味を持った人々が取っつきやすいですね。

 

荒川 百所巡礼 第164番 寄居チャペル

稲荷神社を過ぎて道なりに進んでいますと、賛美歌を歌う声が聞こえてきました。日曜日でしたので、信者さんが集まっているようです。実は私も幼い頃、カトリック教会の合唱団に入っていました。新興宗教の信者である両親が自分の子を教会に通わせるというのは不思議な行為ですが、地域の子どもが皆やっていたので、地域行事のように参加させていたのだと思います。こちらはカトリックではなく、日本リバイバル連盟、宗教法人野上キリスト福音教会というそうです。キリスト教にも宗派がたくさんあります。大きくはカトリックプロテスタント諸派に分けられますが、この諸派が非常に多岐に分かれています。

 

荒川 百所巡礼 第165番 浄土宗 西念寺

駅に近くなってきて、住宅街に入ったところに浄土宗西念寺がありました。創建は江戸初期頃。昭和50年(1975年)に本堂、山門、客殿、庫裏を新築したとのこと。

広い墓地がありますが、こちらの寺院では永代供養の集合墓タイプの納骨堂の他、永代供養の個別納骨の樹木庭園墓があります。いわゆる田舎なので、墓地の後を継ぐ問題は寺にとっても檀家にとっても悩ましいところだと思います。需要があるからでしょうが、複数の選択肢を用意して各々の事情にあった埋葬ができて良いですね。ペット霊園まであって、素晴らしいと思います。

 

荒川 百所巡礼 第166番 浄土宗 正樹院

寄居町観光協会が「武州寄居十二支守り本尊巡り」という霊場巡りを推進しています。先ほどの西念寺は戌亥で守り本尊は阿弥陀如来です。こちらの正樹院は、未申(ひつじさる)で守り本尊は大日如来です。浄土宗寺院で大日如来は珍しいと思っていたら、正樹院の本尊は阿弥陀如来なのだそうです。

寺院の外壁にこのような石像があったのですが、赤く塗られたこちらは不動明王に見えます。やはり浄土宗っぽくないですね、右側のは何だかわかりませんが、庚申塔の一部分かなと思います。正樹院には、大正時代関東大震災の混乱の最中、日本人から虐殺された韓国人の方のお墓があり、地域の皆さんで会を作って、今も供養を続けているそうです。昨年は100周年の大きな法要を行ったと説明書きがありました。

寄居駅前は再開発されていてめちゃくちゃキレイです。Yotteco(よってこ)という観光案内や名産の紹介、各種イベントを行う施設があります。寄居といえば「ホンダ」がF−1で使用しているエンジンを作っている工場がるので、実際にF−1マシンが展示されたこともあるそうです。駅周辺のロータリーの案内看板は北条家の家紋「三つ鱗」がデザインされていて、観光協会の奮闘ぶりが伺えます。

 

荒川 百所巡礼 第167番 浄土宗 浄心寺

こちらはお堂が1つ残るだけの寺院のようです。浄心寺武州寄居十二支巡礼の1つを担当していて、酉年で守り本尊は不動明王だそうです。お堂の右側に不動明王が持つ智剣(倶利伽羅剣)が建立されています。これで浄土宗なの? と言いたくなりますが、浄心寺の本尊は阿弥陀如来だそうです。

 

上流の雰囲気漂う景勝地

荒川 百所巡礼 第168番 玉淀水天宮

西念寺から荒川方面に向かいます。荒川沿いの道に玉淀水天宮がありました。こじんまり整っているように見えます。昭和のはじめ頃、このあたりの荒川の流れが玉のように美しい淀みだったということで、景勝地として開発し、県の名勝に指定されました。開発にあたって、神社を建設することとなり、荒川沿いに石の宮があるのを発見し、調べたところ地元の漁師が祀った水神様だったそうです。

また社殿が瓦屋根ですね。屋根が歪んでいますが、そろそろ修復時期なのかもしれません。川沿いで発見した水神様を元に水天宮を勧請合祀して、玉淀水天宮となったということです。開発したのは現在の観光協会にあたる機関なので、景勝地と水天宮を組み合わせて、例大祭に合わせて大きなお祭りを開催したところ、関東一の水祭りと呼ばれるほどに多くの人々が集い賑わったのだそうです。寄居町観光協会は凄いですね。

こちらが奥宮です。荒川沿いの崖に設置されています。本当は荒川近くの巨石に鎮座していた石祠でしたが、巨石が傾いたので安全を考慮して移設したとのこと。

荒川方面を見ると、確かに巨石があります。若者たちがクライミングの練習をしていました。しかし、また景色が変わりましたね。

石畳の遊歩道になっている川沿いの道を歩きます。「ふるさと文学碑歩道」というそうで、遊歩道沿いにいくつもの文学碑が建立されています。こちらは宮沢賢治の歌碑です。この道はブラタモリでも放送されたそうで、確かに風情のある通りでした。

瓦に大きな石がゴロゴロしていて、遠くまで来たなと思わせる風景になってきました。これまでは背景に映っていた山々の中を、この先歩いていくことになります。荒川はまだまだ続きますので、また続きをお楽しみください。

 

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