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「伝統仏教と欲望者の結論」

天台宗の僧侶による性暴力事件の続報がありました。

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事件の概要を簡単に説明しますと、とある女性が僧になろうと親戚の僧侶にお願いしました。この親戚の僧侶という方が、天台宗の僧階の最高位である大僧正であり、比叡山千日回峰行を満行した北嶺大行満大阿闍梨なのでした。

女性は大阿闍梨に紹介された四国の寺院で修行を始めるのですが、この寺院の住職に「逆らうと地獄に落ちる」と14年間に渡って精神的に監禁状態にされ、性的暴力を受け続けたという凄惨な事件です。女性が大阿闍梨に救いを求めても応じてもらえず、口止め料のごとく大金を支払われたという始末。

女性側は刑事でも民事でもなく、天台宗の宗務庁に訴えを起こしました。求めたのは四国の寺院の住職と大阿闍梨の僧籍の剥奪です。天台宗としてはマスコミに報道された事件を無視する訳にもいかず、天台宗の宗務庁が宗内の司法にあたる審理局にふたりの僧侶の審理を請求し、この度回答が出されました。

四国の寺院の住職は、長年に渡り不倫同然の行いをしたとして住職を罷免、大阿闍梨は処分に当たらないというのが天台宗の回答でした。「精神的監禁+性暴力」を「不倫」と認定している点が、女性側の主張とかけ離れています。

組織の汚点を組織内に訴えても、全力で組織の体裁を守ろうとしますよね。もみ消せるものなら闇に隠蔽しますが、今回は広くマスコミや世間に騒がれてしまい、対処せずにいられなくなりました。天台宗としては住職や大阿闍梨を切り捨てて関係を断って、闇の中にある様々な汚点を晒し出されると困ります。このような場合は外に放り出さず、内側に匿って支配下に置いて黙らせるのが定石です。それなのに逮捕となるといつの間にやら辞していて「元僧侶」となっているのも世の常です。

それでも天台宗が僧の最高位である大僧正・大阿闍梨を審査の対象として調査したこと自体が、前代未聞の一大事であったという評価も聞きます。しかし、結果的には処分無しですから、何をかいわんやという感じです。世論に流されてはいけませんが、被害の証拠が全く無い訳でもなく、それらを調査してこの結論というのは、被害者にも世の中にも受け入れられるものではないでしょう。

天台宗としては「これにて一件落着」ですが、被害者側は法に訴えることになりそうです。法に訴えるには法的根拠が必要で、「14年間の苦しみ」がどれだけ法的根拠になり得るのかは、難しそうにも思えます。マインドコントロール下で抵抗できない状況にされて性暴力を受けたことが立証出来たら、執行猶予無しの准強姦が成立するのではないでしょうか。

本門佛立宗でも尼僧に対する性暴力事件があり、千葉県の寺院の住職が準強制わいせつで逮捕されて、懲役2年執行猶予4年の判決が出ています。

 

当ブログのコラムに何度か書きましたが、日本の僧は俗人としての生活を捨てていないのに、特権階級的な生き方のできる職業になっています。色と欲に溺れてしまう人は、一般衆生よりも多いのではないでしょうか。表に出るのは氷山の一角に過ぎないことでしょう。ただ一連の事件を見て思うのは、表に出るためには、被害者自身がマスコミの前に姿を晒して、自分の声で訴えなければならないという痛々しい現状です。天台宗の思惑通りこれが結論で終わってしまうのか、法的措置も含めて被害者側がどんな手段でこれから戦うのか、まだまだ注目していきたいと思います。

(※ 写真はイメージのためのフリー素材です)

 

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