寺社探訪

寺社探訪とコラム

「夏越の大祓に行く 2025(小野神社)」

夏越の大祓は1年の中間点となる6月30日に、半年間の自分自身の罪や穢れを祓って、残りの半年の無病息災を願う神事です。具体的には神職祝詞を奏上する夏越の大祓の儀式を行ったり、茅の輪を設置して茅の輪くぐりをしたり、人形(ひとがた)に罪と穢れを遷して川に流したりします。

石畳が綺麗な参道ですが、どこだか分かりますか? 去年は府中市にある武蔵国総社の大國魂神社に行きましたが、今年やってきたのは多摩市にある武蔵国一之宮の小野神社です。

当ブログの「長い歴史の寺社3選」の1位としてご紹介しましたが、その後も数々の寺社を訪問していますが、未だに小野神社より長い歴史の伝承を持つ神社には巡り合っていません。2500年を超える歴史が伝わる神社は簡単には現れませんね。

とは言え、現在の小野神社が2500年前から変わらぬ姿でここに存在している訳もなく、多摩川に近い立地からも、川の氾濫によってあちこちに移動しながら存在してきたと思われます。

長い歴史の裏付けとして見て取れるのが、御祭神の多さです。時の流れの中で近隣の神社や祠から様々な神様を合祀してきたことが伺えます。その中でも小野神社の主祭神とされるのは二柱で、武蔵国を開拓した祖神である天下春命(あめのしたはるのみこと)と瀬織津比咩命(せおりつひめのみこと)です。瀬織津姫は日本神話(記紀)に登場しない神ですが、天照大御神の荒御魂との説もあり、謎が多いが只者ではないという、マニアックな心をくすぐる神様です。

瀬織津姫は祓いの神様でもありますので、夏越の大祓にはうってつけの神様なのです。訪問したのは6月27日でしたが、小野神社では6月21日に既に夏越大祓夏至祭としての儀式を済ませていました。茅の輪と形代神事の受付は7月6日までだそうです。大抵は写真のように茅の輪くぐりの作法が書かれているのでその通りに行うのですが、改めて日本人はお辞儀が好きだなぁと思います。

日頃から「こんにちは」を伝えるだけで何度も頭を下げることがありますが、茅の輪をくぐる間にも何度も頭を下げます。そもそも神道の作法は「二礼二拍手一礼」のように頭を下げることが基本になっています。今年ここまでは神仏にお願いしてきたような平穏無事な日々ではなく、心も身体もサイフの中身もボロボロになるような出来事が連続しています。それでも神仏を信仰して生活していくことで、残り半年も気持ちだけは豊かに過ごしたいなと思います。

授与所の横に形代の受付が設置されていました。初穂料は500円〜お気持ちです。形代を身体の良くなってほしいところなどに当てて、息を3回吹きかけます。そうすることでこの半年間で溜まった罪や穢れが形代に遷されるという訳です。

そもそも「穢れを祓う」というのは、イザナギの禊に見られるように、古来より重要視されてきた価値観のひとつです。大祓の儀式も現代でも宮中行事として受け継がれています。明治天皇の命によって、宮中だけでなく全国の神社で大祓の儀式が行われるようになり、茅の輪をくぐり、形代に罪や穢れを遷して祓うという大祓が定着していきました。私にとっては罪や穢れが本当に消えてくれたら有り難いと期待しつつ、「早くも今年半分が過ぎたのか」と、節目を感じる行事でもあります。

 

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