寺社探訪

寺社探訪とコラム

「桜の名木を見に行く」

東京の桜も満開になりました。

水不足が叫ばれていても、3月下旬には雨が振って、雨が降る度に春が色濃くなります。こういうのは自然の摂理が正常に機能しているようで、心地良いものです。その後に地獄のような暑さが秋まで続くことはなるべく考えないようにして、ひとときの陽気を楽しみましょう。

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やってきたのは京王線多磨霊園駅です。多磨霊園の参道にも桜並木が植えられていて、満開時には素晴らしい桜のトンネルのようになっていました。近年植え替えが行われていて、以前のような桜のトンネルが復活するには数年あるいは数十年かかると思われます。

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さて、多磨霊園とは反対側の南口から坂をくだります。これは大昔に多摩川が岸を削ってできた段差によって坂になっています。いわゆるハケの道と呼ばれる高低差のある地形なのですが、川の流れの他に断層によって現れたりします。このハケの道は府中市を東西に貫いていて、私は府中市に2ヶ所、国立市に1か所居住した経験がありますが、ハケ下だとハザードマップが一気に危険色に変わります。

さて、飲食店やコンビニのある短い商店街を抜けると、遠くに目的の桜が見えてきました。途中に多摩川競艇のシャトルバスの乗り場があるのですが、結構頻繁に走っているようでした。興味が無いので日頃は意識もしないですが、平日の昼間からバスを待つ行列ができていて、結構な人気なのだと思い知ります。

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枝垂れ桜と石碑の組み合わせが素晴らしいです。ここは府中市の桜の名所、日蓮宗東郷寺です。それにしても大きな枝垂れ桜と石碑ですね。当日3月30日の開花状況はというと、残念ながら満開を過ぎて散っているところでした。枝垂れ桜の見頃は他の桜よりも早いんですね。咲き誇る桜の花のエネルギーは感じられませんが、春の風に花びらが雪のように舞い散るのも一興です。

このエリアで働いていた頃には東郷寺の前の道をよく通りかかっていましたが、春にはカメラを持った大勢の観光客が集まります。見頃を過ぎてしまったことと、前日の日曜日が良いお天気で花見日和だったこともあり、この日は観光客も少なめでした。

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今年の東京は満開宣言と雨が重なって、短い花見期間になりましたね。東郷寺はその名の通り東郷平八郎元帥が開基となっている日蓮宗の寺院です。見どころは、大きな枝垂れ桜と黒澤明監督の「羅生門」のモデルになったという山門です。

僧侶は職として見ると特殊な業態で、比較的変わった人が多いのですが、中でも日蓮宗は超個性的な人が多いというのが私の印象です。なぜが日蓮に似て、良きにせよ悪しきにせよ、プライドが高く排他的でアグレッシブな人が多いです。26年間このエリアの葬儀業界で働いていた私の記憶にも、東郷寺は独特という印象があります。

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東郷寺の桜は山門の外側に植えられています。戦没者慰霊のために、日蓮宗総本山の久遠寺から苗をいただいたのだそうです。東郷寺は桜の名所ですが、多くの人がシートを広げて飲食したり、出店が建ち並んだりすることはありません。ただ観賞するのみで、これこそが「花見」ではないかと私は大賛成です。

桜は人々が待ち望むのを忘れた頃にいつの間にか咲いていて、満開になるや散り始めてしまいます。そのわずかな開花時期に人々は桜の木の下に集い、その美を目に焼き付けます。ある者は仲間と共に酒に酔い、ある者は心に詩を紡ぎ、ある者は絵画や写真に残します。そしてある時代には、満開の桜と共に祖国と家族を想い、遠く南の島々で戦死した人々がいました。

そして今年も桜は散っていきます。この刹那の恍惚こそが桜の魅力で、いつまでもこの国の人々の「特別」であり続ける由縁ではないでしょうか。

ちなみに、東郷寺の入口から北に向かって「かなしい坂」という坂道があります。これは玉川上水を開削する際、当初はここを通して神代(調布市)あたりまで開削工事をしたところで、試しに通水してみたら、このあたりの乾いた地層に水が浸透してしまい、計画が破綻してしまったのです。その責任を問われて処刑された役人が「かなしい」と嘆いたことから「かなしい坂」と呼ばれています。現代感覚だと理不尽な処刑ですが、それほどに玉川上水の開削は幕府を挙げての一大プロジェクトだったのです。その後福生から取水するもまたも失敗し、結局羽村からの取水となったという訳です。

 

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