布多天神社 目次
名称・社格
布多天神社と称します。旧社格は郷社です。
創建
垂仁天皇の代(3-4世紀)と伝えられています。
御祭神
少名比古那神(すくなひこなのかみ)菅原道真(すがわらのみちざね)
ご神徳
合格祈願・病気平癒 他
みどころ
調布の中心地にある。元の場所は現在古天神公園となっている。ゲゲゲの鬼太郎の住処のモデル。
アクセス
東京都調布市調布ケ丘1-8-1
京王線「調布」徒歩10分
探訪レポート
東京都調布市の中心地にある布多天神社に行って参りました。このような都市の中心にあるような神社は、その地域が発展する前、人々がそこに集まり始めた頃に創建され、非常に長い歴史があるところが多いです。布田天神の創建も不詳ということですが、垂仁天皇の代とされているので、およそ3~4世紀という超老舗です。
静かで広々とした境内で、神域を感じる空気が漂っています。天神社なので、菅原道真を祀っているのですが、もちろん創建時には菅原道真は存在していません。布田天神はそもそも現在地より多摩川に近い場所にあり、少名毘古那神をお祀りしていました。多摩川の氾濫のためにこの地に移転したことをきっかけに、菅原道真もお祀りすることになったそうです。ただ、菅原道真をお祀りする前から天神社と呼ばれていたそうです。こういうのはレアケースではあるけれど、例がない訳ではないという感じだそうです。
こちらの手水舎は、センサー式で近づくと水が流れ出す仕組みです。コロナ以降このような手水舎が増えましたね。今はコロナで自粛されている様子ですが、この広々とした参道に出店が並んで、昔ながらの縁日や骨董市に境内が賑わう日があり、古き良き風景を見せてくれます。
本殿へ向かう途中に、早速赤い鳥居の境内社が登場します。もう、無い方が少ないんじゃないかと思われますが、布多天神社にも立派な稲荷神社があります。
風鈴がたくさん吊ってありました。夏の行事の名残でしょうか。ここを訪れたのは9月なので、もう片付けた方が良いですね。
天神なので、伏せた牛がいます。平成と書かれてあるので比較的新しいものですね。天神の牛は人々に撫でられて、鼻や頭の色が落ちて、金色に光っているものですが、布多天神社の牛はまだまだ撫でられて足りない感じです。
さて、天神=菅原道真=学問の神という発想になりますが、布多天神社はそれ以前から、少名毘古那神をお祀りしてきた神社で、その要素も色濃く残しています。少名毘古那神は、神田明神の回でも登場しましたが、天の主神=天照大御神に対し、地の主神である大国主命と共に日本という国を作り、人々に生きていくための知恵と技術を授けた神です。特に医療が有名で、この布田天神社でも病気平癒や健康祈願、商売繁盛などが有名だそうです。神社の入り口にも、犬の日の安産祈願の案内が出ていました。
といっても天神様なので、合格祈願の絵馬がたくさん奉納されています。上野の寛永寺を訪れた回で、上野公園内にある五條天神社が、大己貴命(大国主命)と少彦名命と菅原道真を祀っていました。大己貴命と少彦名命はセットが多いのですが、布多天神社は少彦名命単独で、少彦名命を祀った神社を天神社と呼ぶことがあるそうです。
こちらが本殿となります。境内の建築はいずれもそこそこ新しいもののようで、歴史を感じるような建物はありませんが、丁寧に整備されているといいますか、清潔感を感じます。布田天神は甲州街道から北へ少し入ったところにありますが、甲州街道より1本南の旧甲州街道から、天神通りという参道が通っています。飲食店中心の人通りの多い商店街で、げげげの鬼太郎の水木しげるさんが住んだ街ということで、商店街のあちこちに妖怪がいます。その商店街(参道)をまっすぐ北に抜けると入り口があり、本殿正面に突き当たるという感じです。本殿の裏の森の中に鬼太郎が住む家があるという設定だそうですが、本殿の裏は木々があり、その裏は隣接する大正寺の墓地となっています。まさに「墓場の鬼太郎」ですね。
本殿の右側に境内社が並ぶエリアがあります。こちらは大鳥神社と金刀比羅神社です。大鳥神社は日本武尊をお祀りしている神社で、金刀比羅神社は、かつては神仏習合の金刀比羅大権現をお祀りし、明治維新後は大物主神を祀った神社です。金刀比羅神社は流通や海運の神様で、海に携わる方々の信仰が厚い神社ですが、なぜ調布に祀られることになったのでしょうか。
2つ目の稲荷神社です。主祭神から境内社、屋敷や企業に数え切れないほど祀られています。稲荷神を祀る稲荷信仰という、神道からも仏教からも超越したような信仰で、まさに「The 日本の信仰」という感じです。明治維新で神道と仏教に無理やり分別したみたいになってしまいましたが、それでも未だに大きな信仰を集めています。
こちらは厳島神社です。谷保天満宮にもありましたね。お祀りされているのは、宗像三女神(市杵島姫命・田心姫命・湍津姫命)です。市杵島姫命は、神仏習合で仏教の弁財天と同一視されています。小さいですが、お洒落に纏まっていますね。
そして、一番外側に三社がまとめてお祀りされています。内側から御嶽神社、祓戸神社、疱瘡神社となっています。この三社は、他の境内社とは性質が異なっていて、だから3つまとめて別にしてあるのだなぁと思います。御嶽神社は武蔵御嶽神社の回に出てきましたが、蔵王権現という神仏習合の神への信仰です。祓戸大神とはお祓いの神で、日本神話で伊邪那岐が黄泉の国から帰ったときに禊を行ったのですが、その禊の際に生まれたいくつかの神々の中で、お祓いをつかさどる神々を総称して祓戸大神というそうです。神道は穢れを嫌い神事の前にはお祓いをするものです。そんなお祓いという役目を持った神様もいるんですね。疱瘡神社というのは、祇園信仰という神仏習合の牛頭天王を祭神としてお祀りする信仰です。奥に貼ってある紙は、疫病鎮静の神「疱瘡神社」✕妖怪界の神「水木しげる」の特別コラボ御朱印のご案内が書かれています。牛頭天王の本地仏が薬師如来だからか、疱瘡神社は疫病鎮静の神なのだそうです。コロナに苦しむ世界をなんとかしたいという調布布多天神社の気合を感じます。
こちらは神楽殿です。布多天神社では頻繁に神楽のイベントが行われていて、その際にはこの神楽殿で舞が披露されます。9月の例大祭には、薪夜神楽が披露されるそうです。コロナ禍で開催の情報はよくわかりませんが、本来であれば、調布駅北口から旧甲州街道、天神通りと神輿や山車が出て、お囃子が鳴り響く、これぞ昔ながらの東京のお祭りという感じで多くの人で賑わうはずなのですが、今年はどうなのでしょうね。
雨の合間に訪れたので、空気がモヤモヤしていますが、調布生まれの方々にとっては、地元の誇るべき神社という感じだと思います。調布の神社やお寺は、ゲゲゲの鬼太郎と深い関わりがあるところが多いようですが、地方出身の私はゲゲゲの鬼太郎にときめくことなく子供時代を過ごし、かなり捻くれた青春時代を送ってしまったので、調布の漫画家といえばつげ義春だと思っています。
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