危険な暑さが続いている日本列島ですが、お葬式業界は相変わらずスーツにネクタイが必須で、熱中症になる人が続出しています。小池知事がクールビズを言い出したのなら、東京都夏季ネクタイ・ジャケット禁止条例とか作ってほしいなぁ。
さて、かつて葬祭専門の卸売業者が主催する葬祭用品展が年に1度程で開催されていて、各葬儀社の社員たちがトレンドやお買い得を求めて訪問していました。そんな葬祭用品展が発展を続けて、現在では企業イベント企画会社が開催する葬祭フェアがいくつかあります。葬祭関連会社がブースを借りて自分たちの販促になるような展示をしていて、実演や相談会など様々に趣向を凝らしています。
少し前は納棺師による納棺の実演や、生花を目の前でアレンジして凝った花祭壇を完成させるパフォーマンスなどが人気でした。現在では展示によるパフォーマンスはやり尽くした感があり、専門家によるセミナーが主なイベントとなりつつあります。集客方法や式場運営やサービスの向上など経営的なテーマが多く、テーマ別に様々な講義が行われています。対象も葬儀社だけでなく、寺院や墓石会社向けの展示やセミナーも用意されています。
また。この展示会のもうひとつの意義的なものとして、顔を売りに行くというものがあります。葬儀業界から人が集まるので、多くの葬儀社と取引したい会社は顔を売るチャンスです。周りは展示やセミナーなど話題に溢れていますし、葬儀場以外の場所で出会うことで絆と話題が生まれます。とにかく歩いているとよく名刺を求められ、知人に会うと、「おっ」と嬉しくなるのも事実です。
東京近郊で行われる大規模でそれなりの歴史のある葬祭フェアは2つあって、ひとつは綜合ユニコムが主催している「フューネラルビジネスフェア」で、パシフィコ横浜で開催されています。もうひとつは東京博善が主催している「エンディング産業展」で、東京ビッグサイトで開催されています。以前はTSOというイベント産業の会社が運営していたのですが、中国資本で勢いに乗る東京博善に譲渡したのですね。これらは葬祭業に従事する方向けの展示会なので、一般の方々は入場できないシステムです。
毎年参加している人もいると思いますが、数年前に訪れた様子を簡単にレポートしてみます。一度参加すると翌年から招待状が届きます。招待状が無くても、ネット予約や当日会場でも登録できるので、入場に問題はありません。私が訪問したのはエンディング産業展で有明のビッグサイトに行きました。会場に入ると受付で申込書的なものと名刺を2枚提出しました。自分の名刺を貼り付けた首から掛けるIDカードのようなものを受け取り、入場します。毎年行われていて、展示ブースも出し尽くした感があって、これと目を引くものは少ないです。どんなものが展示されているかというと、アイデア商品やハイテク商品が多いです。腕力がなくても扱えるストレッチャーや、ドライアイスに代わる遺体保全用品、案件や受発注の管理システムや、故人の個性を活かした返礼品だったりと、様々な展示があります。やはりブースを出している会社は、ビジネスに繋げたいですから名刺くださいと、どこに行っても言われます。キャンピングカーのような移動斎場が展示されていて、興味を持って見学しました。葬儀を施行する我々の立場から見ると面白いなぁと思いますが、いざお客様目線で需要があるのかと問うと、なかなか難しそうです。葬祭フェアとは関係ないですが、アイデア商品といえば、以前新宿の繁華街に住む方の葬儀に関わった際に、8人乗りのハイエース型霊柩車である「絆」の実物を見ました。「これは素晴らしい。大流行するぞ」と興奮しました。ところが実際には火葬場でもあまり見かけないし、時代がまだ追いついていないのか、流行ってはいません。お葬式が核家族化していく流れの中で、思わず自費で買ってしまいそうになるほど最高のアイデア商品だと思ったのですが……。
私はセミナーに参加したことはないのですが、ここ数年の開催では、展示よりセミナーがメインのようになっているそうです。葬儀業界を取り巻く社会の需要の変遷を把握して、効率良くサービスを供給するための様々な講座が組まれています。葬儀社は多くの付帯業者を利用して仕事をしますので、どうしてもお山の大将になってしまいます。付帯業者は仕事を得るために葬儀社の社員を持ち上げますから、葬儀社の社員は誰かから自分の運営手腕やセンスを客観的に評価される経験が不足しています。これらのセミナーを活かして自分を見直すきっかけにできれば良いですね。
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