灌仏会は、通称「花まつり」と言って、4月8日のお釈迦様の誕生日に行う行事です。日本は仏教国のようでいて、日本人は宗教に無関心かつ寛大なので、キリストの誕生日よりも遥かに知られていない、知る人ぞ知るマイナー行事になっています。
コロナ感染防止の関係で、制限したり中止したりというお寺が多かったのですが、私はこの度は浄土宗の大本山、増上寺に行くことにいたしました。増上寺は上野の寛永寺とともに、江戸の街を護り、将軍家の菩提を弔う役目を果たしてきた寺院です。法要は午前中に行われたようですが、混雑する時間に行くのも憚られますので、午後になってから訪れました。すると、余計な配慮だったのか、ほぼ誰もいないという状況になってしまっていました。閑散としていて、ソーシャルどころか、声も届かないロングディスタンスです。
こちらの写真をご覧いただけると、いかに閑散としているかがおわかりいただけると思います。大殿は改修工事中。大殿の前にグリーンカーペットが敷かれ、紫のステージが組まれています。このステージの上には「花まつり」特有の荘厳(飾り付け)がなされています。そして・・・誰もいません。
グリーンカーペットの入口に立っていた若いお坊さんに「お参りしても構いませんか?」と尋ねてみる。
「どうぞどうぞ」と快く受け入れられ、入口のお賽銭箱に小銭を投じ、置かれていたアルコールで手指を消毒します。カーペットを進み、ステージの上へ。お参りをする人もいなければ、見物する人もいない。見てほしい訳ではないが、なんだか寂しい。しかし、さすがに増上寺の花御堂は凄い立派ですね。
花御堂(はなみどう)とは、上の写真の中央にある小さなお堂。お釈迦様の誕生日を祝うべく、花で飾り付けるのですが、こんな全面花だらけのものは初めて見ました。お堂の中には甘茶が入った皿に乗った誕生仏が安置されていて、柄杓を使って甘茶をすくい、誕生仏にかけます。誕生仏とは、右手で上を指差し、左手で下を指差した「サタデーナイトフィーバー」的なポーズの仏像です。お釈迦様が生まれた時、このポーズで「天上天下唯我独尊」と言った、という言い伝えを表現しています。甘茶をかけるのは、お釈迦様が生まれた時に甘露が降り注いだという伝説からだそうです。
お参りを終えると、ステージ横にいたイベント会社的なスーツの方に案内され、右に進みます。すると、若いお坊さんたちが数名いて、甘茶を振る舞ってくださいます。美味しくも不味くもない甘茶ですけど、私ひとりのために何人ものお坊さんでお迎えしていただいて、 有り難いなぁといただきました。
最後に花まつりと甘茶の説明が書かれた小さなチラシを頂き、こんな感じで私の「花まつり」は地味に終了しました。
コロナがなければ、稚児行列をしたり、高僧の法話があったり、芸人や歌手のショーがあったりと、大掛かりにするお寺もありますが、今年は自粛ムードです。ネット上に、増上寺で数年前に行われた灌仏会(花まつり)のワンシーンがあったので、リンクを貼らせていただきます。
本来ならこの他にも様々なイベントが盛り込まれるのですが、できないことを悔やむより、できることを有り難く感じましょう。こんな立派なステージと花御堂を用意してくれていた増上寺は、さすがに由緒正しき大寺院という感じです。
花まつりの前日の4月7日に、仕事であるお寺にいました。小さくはないが大きくもないお寺なのですが、翌日のために花御堂を用意しているのが見えたので、お寺の職員さんに聞いてみました。その職員さんは地元で生まれ育った70代の方で、そのお寺の檀家さんで、私とは20年以上前からの顔見知りなのです。
昔は近所の子供たちと甘茶欲しさにやって来たものだったそうですが、今はこちらが通りに出て声をかけて引っ張ってこないと誰も来ない、とのこと。無料で甘茶を振る舞ってくれるとなれば、子供たちは喜んじゃいますよね。というのはひと昔もふた昔も前の話です。自分で参加していて言うのもなんですが、魅力としては今ひとつな行事です。わざわざコロナ自粛の中を出かけるほどではありません。まぁ、自粛するまでもなくマイナーな行事ですが・・・。
さて、それでは、お釈迦様のご命日ってご存知ですか?
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