寺社探訪

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「宮型霊柩車」

先日、数年ぶりに宮型の霊柩車が走っているのを見かけました。ほぼ需要が無いと思われますが、稼働できるように維持しているのは大したものです。

 

私が葬儀業界に入った頃(26年前)は既に洋型霊柩車が主流になりつつありましたが、宮型霊柩車もまだまだ走っていました。ちなみに、宮型霊柩車のランク付けは、土台になっている車の大きさと、乗っているお宮の材質などで決まってきます。一番下のランクでも土台はトヨタのクラウンで、上のクラスはキャデラック、間にリンカーンという感じです。各葬儀社がオリジナルで所有している霊柩車は、それぞれ土地柄や社風が表現されていて、他県の火葬場に行くとカルチャーショックを受ける霊柩車もあります。かなり昔のことですが、屋根の上に宝玉を握った金色の龍が乗っている霊柩車を見たことがあります。日本では見ることもなくなった宮型霊柩車ですが、アジア諸国ではこのような派手な霊柩車を好む国も結構あります。まだ会社に所属していた頃、中国の葬儀社から日本の宮型霊柩車を輸入したいという話をいただいたことがあります。

さて、ご遺体を運ぶ目的の葬儀用車両には、霊柩車と寝台車という区別があります。これは用途で区別しています。霊柩車は葬儀の式場から火葬場へ移動するときに使用する車両です。お葬式のラストで、参列者に見送られながら走る車両なので、豪華な見た目になっています。宮型霊柩車でも洋型霊柩車でも、見た目で霊柩車だとわかります。

これに対して寝台車は、病院から自宅や保棺施設へ搬送したり、自宅や保棺施設から式場へ搬送したりすることが目的の車両です。お葬式で使用するものではないので、見た目は通常の1BOXで、社内も装飾されていません。かつてはトヨタエスティマが多かったのですが、今の日本は1BOXカーが流行ってますから、アルファードやエルグランド、ノアやヴォクシー、ステップワゴンの他、ハイエースの寝台車もあります。

1BOXが流行ると、アルファードなどの高級車が市場に出て、「霊柩車としていけるんじゃない?」という考えが出てきました。アルファードの車内を簡単に装飾して、霊柩車に相応しい様相を整えた1BOX霊柩車が出始めます。兼用なので効率よく稼働できて、コストも抑えられます。折しも家族葬の普及によって、費用を抑えた葬儀が需要を得始めた頃でした。アルファードだけでなく、ノアやステップワゴンも「霊柩車兼寝台車」として多く使用されるようになりました。

ちなみに霊柩車や寝台車は緑ナンバーで、使用するには貨物自動車運送事業者である必要があります。法律上、ご遺体は貨物扱いなのです。一般貨物自動車運送事業者は、確か5台以上の車両の所有が条件ですが、霊柩車限定だと1台でも事業者として活動できます。クリアしなければならない条件はありますが、1BOXの車両を霊柩車仕様にして1人でも開業できますので、霊柩自動車会社から独立したり、葬儀社から転職したりと、1人社長の霊柩運送会社が乱立しています。

通夜を省略してワンデー葬儀にしても、葬儀すら省略して火葬のみにしても、ご遺体の搬送は省略することができないので、葬儀の様相が変化していっても、需要が見込める業種ではあります。ただ、競争が激しいので経験がほぼ無い状態からスタートするのは難しいと思われます。例えば葬儀社として独立するついでや、冷蔵庫を購入して保棺業務を始めるついでに、1BOX車を一台購入して霊柩事業も組み合わせるというのが、成功の道かなと思います。

 

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