先日、無宗教葬儀の司会の依頼がありました。現在でも9割以上が仏式葬儀ですが、無宗教形式の葬儀もコロナ禍による葬儀の簡素化のため、少しずつですが増えているようです。無宗教葬儀に興味のある方や、仏式葬儀に違和感がある方、お布施を払いたくないという方は、是非参考にしてみてください。
無宗教葬儀の式次第
「特定の宗派にとらわれず、宗教的に自由な形式で行われる葬儀」と定義付けられます。仏式なら僧侶、神道なら神官、キリスト教なら神父や牧師が、それぞれの宗派の教義に則って司式を担当します。無宗教葬儀ではこの教義に当たる部分を、遺族と葬儀社の担当者で創造します。無宗教葬儀で重要となるポイントは、遺族の希望に沿った式次第の作成です。1時間なら1時間の儀式の中で、何をするかを組み立てます。無宗教葬儀には宗教色が入ってはいけないと思う方もいますが、そうではなく、特定の宗教にこだわらず宗教的に自由に葬儀を行います。お焼香をしたければして良いし、合掌したければして良いです。費用の節約のために無宗教葬儀にしたい方は、一般的に献花よりも焼香の方が費用が抑えられます。
無宗教葬儀は遺族が自由に組み立てるものですから、何でも構わないのですが、1つ例として式次第をご紹介します。
①開式の辞
司会者が開式の辞を述べます。
②黙祷
一同起立し、故人に対し黙祷を捧げます。
③経歴紹介
司会者が故人の経歴や人柄、遺族から聞き取りしたエピソードなどををまとめたナレーションを読み上げます。
④お別れの言葉
参列者のひとりが、故人に対してお別れのメッセージを述べます。弔辞と同じです。
⑤献花
参列者が順番に祭壇前に出て、献花台に花を手向けます。
⑥お別れの儀
参列者が棺の中に花を手向け、故人との最後の対面をします。
⑦代表挨拶
遺族の代表者が、参列者に御礼の挨拶をします。
⑧出棺
参列者に見送られ、火葬場へ向け出棺します。
他にも故人に対して歌や踊りを捧げたり、好きな曲を流したり、遺族が祭壇に灯りを点したり、喪主が作った思い出の映像をスクリーンに映したりと、やりたいことを盛り込んで式次第を作ります。例えば、式場て座って行う儀式だけでなく、別室に故人の写真や愛用品、踊りやお祭りの衣装、故人が描いた絵や作った作品など、思い出の品々を飾って、遺族と参列者が語り合いながら思い出に触れる時間を作ったりと、こんな風に送り出したいというアイデアを、式次第に盛り込んで行くと良いと思います。
無宗教葬儀にする理由
式次第が重要というお話をしましたが、無宗教葬儀を選ぶ遺族の中には、仏教が嫌だったり、単にお布施を払うのが嫌だったりする方もいます。そのような家族に多いのですが、どのような葬儀にしたいですか? と聞いても、「別に……」という答えが返ってくることがあります。何を聞いても「いらない」「しなくていいです」という感じで、結局葬儀社が用意したテンプレートのような葬儀になります。何もしたくないので式次第もスカスカで、司会者が喋っているだけで時間が過ぎていく葬儀や、20分ほどで終わってしまう葬儀になってしまいます。
逆にやりたいことがあり過ぎて、とても時間が足りなかったり、実現不可能なことだったり、独りよがり過ぎて理解されないことを希望する遺族もいます。24時間ぶっ通しで葬儀をしたいとか、参列者全員に弔辞を述べてもらいたいなど、イメージを膨らませてアイデアを語る方もいます。我儘だ常識知らずだと嫌がる担当者もいますが、私は結構好きです。大切な人をこのように送りたいという強い思いがあるのは素晴らしいと思います。プロとして是非実現したいじゃないですか。もちろん、できることとできないことがありますが、思いの中身を聞いて、その思いを満たせる別の方法を提案したり、クリエイティブで楽しいです。
無宗教形式の家族葬
私の経験では、どちらかというと、やりたいこと満載の方は少数派で、「別に……」という方が多数派です。無宗教葬儀は自由な形式の葬儀なので、遺族がやりたいことを満載にする義務もありませんので、それで構わないと思います。
最近は特に家族葬も増えていますので、故人の経歴紹介をすることも少なくなっています。家族から聞き取った内容を、司会者が語って家族が聞くというのも変ですからね。「お前に言われるまでもなく知ってるわ」という話です。参列者がいない家族葬では、式次第を作るのもひと工夫が必要です。思い描いた葬儀を形に変えるプランを葬儀社の担当者と相談するのですが、葬儀社の柔軟さや経験値が試されますね。現在私が知る限りでは、無宗教形式の家族葬だと、特に式次第を作らず、棺の蓋を開けて故人を囲んで、ゆっくり時間を過ごすというものが多いです。出棺の時間に合わせて、家族で棺に花を手向けて最後の対面をして出棺するという感じです。記念写真を撮るのが好きな故人の葬儀で、たくさんのアルバムを囲んで、家族が親族の方々と写真を見て語らいながら過ごしたいという葬儀もありました。今後も家族葬はますます広まるでしょうから、この先もっとアイデアに満ちた無宗教形式の家族葬に出会えるのが楽しみです。
( ※ 写真はイメージのためのフリー素材です)
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