寺社探訪

寺社探訪とコラム

阿豆佐味天神社

阿豆佐味天神社 目次

名称・旧社格

阿豆佐味天神社(あづさみてんじんしゃ)と称します。社格は郷社で。武蔵国多摩郡延喜式神名帳に記載されている多摩八座のひとつです。

創建

寛平4年(892年)に高望王によって創建されました。

御祭神

少彦名命(すくなひこなのみこと)

素戔嗚尊(すさのおのみこと)

大己貴命(おおなむちのみこと)

みどころ

狭山丘陵を背にした歴史ある神社です。平日は非常に静かで、穏やかな気持ちになれます。

アクセス

東京都西多摩郡瑞穂町殿ヶ谷宮前1008

JR八高線箱根ヶ崎」下車 バス+徒歩で20分

 

探訪レポート

ひと山越えれば埼玉県という立地にあります、阿豆佐味天神社です。名前が難しい神社ですが、武具や神具として使用された梓弓(あずさゆみ)から名付けられた説と、楸(きささげ、別名あずさ)という木の名前から名付けた説、甘い味の湧水から名付けられた説などがあります。天神社というと、天神様=菅原道真が祀られているという印象がありますが、その他に少彦名命を祀った神社が天神社と呼ばれています。少彦名命は、天津神(天の神様)で、地の神様の大国主命と共に国造りをしたことで有名です。

何とも味のある石灯籠ですね。立川市の普済寺を思い出します。少彦名命は医薬の神様としても有名で、他におまじないや知識や酒造の神としての性質を持ち、日本神話では海の向こう(常世国)からやってきて、海の向こうに去っていった言い伝えがあることから、渡来人だったのではないかという説もあります。ともあれ、まだ天地が分かれて国が造り出される頃のお話なので、少彦名命は天の神様だから天神様と称されています。菅原道真ではなく少彦名命を祀る天神社は、上野公園の五條天神社稲城市の穴澤天神社などがあります。調布市の布田天神社はそもそも少彦名命を祀った神社ですが、歴史の途中から菅原道真も祀っています。

階段を上った右側に手水舎があります。錆びたトタン屋根が何とも言えませんが、こちらは使用されていませんでした。

左側にも手水舎があり、石の手水鉢の上にトロ箱が置かれていました。蛇口があるのですが、ホースがついていて、ホースの先は左側の地面の泥の中です。蛇口をひねると水が出ましたが、触ると余計に汚れてしまう感じでした。

拝殿は明治27年(1894年)に改修されたそうですが、130年の風格を感じます。とにかく境内に人がいないので、自分の足音だけを聞きながら、神聖な気持ちになれます。お祀りされているのは少彦名命の他、素戔嗚命大己貴命です。大己貴命大国主命の別名で、少彦名命と共に国造り神話の主人公です。日本書記では素戔嗚命大己貴命大国主命の親神となっています。

良く言えば味がある、悪く言えばボロさが目立つところもあります。扉が開いていますけど、毎日開けたり閉じたりする方がいらっしゃるのでしょうか? 歴史ある神社で、氏子組織もしっかりしていると思いますが、おそらく常駐の宮司さんはいないように思われます。ちなみに立川市にある阿豆佐味天神社は、こちらのご祭神を勧請したとのことです。

社殿の左側は境内社のエリアになっています。赤い鳥居はお稲荷様ですね。かなり傷んでしまっていますが、誰かがちゃんと注連縄と紙垂を張っていることに感動します。頭を下げて鳥居をくぐります。

こちらは集合住宅型のお社です。左が雷神社、中が八幡社、右が熊野社となっています。前にもうひとつ小さなお社があり、右側にもあります。何の神様をお祀りしているのかわかりませんが、こちらも注連縄と紙垂が張られていて、丁重に扱われていることがわかります。

社殿の右側に広いスペースがありますが、山側に立派な境内社があります。鳥居の前に立つと、鳥居の中に5cmは優に超える蜘蛛が全面に大きな巣を作っていました。私が鳥居を通過すると、せっかく命を削って作った蜘蛛の巣が破壊されてしまいます。鳥居の横を通ってお参りしました。こちらは神明社です。当ブログでもご紹介した小平市にある小平神明宮はこの神明社から勧請したとのことです。

腰を下ろして寛げる場所がありました。土地を開いて人々が住み着く際、必要なものとして水があります。そのために崖沿いや山沿いの湧水が豊富な場所を開拓し、住民の拠り所として神様を祀りました。紀元前389年創建と伝えられる稲城市の穴澤天神社も、山を背にした崖にあります。阿豆佐味天神社も、そんな太古の人々の信仰を感じられるような場所でした。

 

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