以前こちらで「寺院消滅」という本を紹介しましたが、あの本は僧侶側から見た寺院が直面している現実問題をシリアスに書いていた本です。この「お坊さんが隠すお寺の話」の著者は大学の先生で、特に寺院や宗派と利害関係のない方なので、やや寺院を揶揄しつつ寺院が直面している現状を書いています。
江戸時代に徳川幕府が作った寺請制度こそ、現代人が幸福を宗教に求められない原因だと私は思うのですが、そのようなことも書かれています。少し話が簡単に書かれているようにも思えますが、事態を把握するには、説明はわかりやすい方が良いですからね。明治時代に終わったはずの寺請制度に、未だに縛られて生きている現代日本人に、離檀したり、新宗教に入信したり、自由に信仰することができるのですよと説明する一方、ご都合主義で信仰の本質を失っては意味のないことを伝えています。
私は葬儀業界で働いているので、著者のように第三者として寺と檀家を見つめる人と観点が近いのか、共感する部分が多かったです。特に、「団塊の世代の人々を僧侶に」という考えは、素晴らしいです。どの世代でも良いとは思いますが、社会人経験を定年まで勤めた方は、自分の経験から生きる道を説くことができ、親の跡を継いで学生から僧侶になった人とは違うはずです。どちらが良いとかではなく、経験が違えば価値観も違うということです。もちろん、僧侶になるための準備は必要だと思いますが、そんな道筋があって、門戸が広く開かれていたら、仏教の抱える問題の一部分を解決してくれるように思います。
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