寺社探訪

寺社探訪とコラム

三峯神社

三峯神社 目次

名称・旧社格

三峯神社と称します。三峰宮・観音院高雲寺・三峰大権現と呼ばれていた時代もあります。旧社格は県社です。

創建

景行天皇の御代ですので、暦や干支による西暦対照表では紀元61年~130年、考古学上は4世紀初期~中期と想定されています。いずれにしても神話の世界と現実が交差する話です。日本武尊命が景行天皇の命で東征に向かった際、伊弉冉尊伊弉諾尊の国生みを偲んで、この地に二神を祀ったのが始まりとされています。

御祭神

伊弉冉尊(いざなぎのみこと) 伊弉諾尊(いざなみのみこと)

みどころ

神話の時代から受け継がれる日本武尊命とお犬様の伝説が息づく神社です。中世~江戸時代の修験道神仏習合の名残も各所に見られます。関東最強とも言われるパワースポットとなっています。標高1100mの神域に鎮座するひとつひとつ美しい社殿も見逃せません。

アクセス

埼玉県秩父市三峰298-1

西武秩父線西武秩父」よりバス約75分

探訪レポート

表参道を歩いてきたので、本当は奥宮遙拝所あたりから三峯神社に入りました。しかし、多くの方は自家用車かバスでいらっしゃると思うので、神社の正面からレポートしていきます。バス停や駐車場から少し上り坂を歩くことになります。三峯神社の象徴的な三ツ鳥居が見えると、そのすぐ脇に大島屋さんがあります。境内にもお土産や記念品を買えるお店はありますが、こちらは峠の茶屋的なお店です。平日でしたが、紅葉時期のお昼時で大繁盛していました。

参道の脇には講の建てた石碑が並びます。そもそも秩父の町は、三峯神社門前町として発展していったそうです。関東最強のパワースポットとよく紹介されていて、秩父エリアの核となる施設で、今でも多くの講があるのだと思います。

こちらはかつては交番だったそうです。ちょうど境内の中央あたりの交差点にあります。交番が必要なほど参拝者が多かったということでしょうか。現在は塩化カルシウムが大量に積まれている倉庫になっていました。冬は凍結して大変そうですからね。

日本武尊命の像の方へ上がって行くと、途中に大山倍達の記念碑がありました。若い頃に三峰山で修行をしたそうです。「空手バカ一代」の世界ですね。きっとその辺の木や岩を叩いたり蹴ったりしていたのでしょう。

更に上がると日本武尊命の像がありました。バランス的に手が大き過ぎますね。像の周囲はぐるっと一周できる広場になっていて、360度各方位から日本武尊命を見ることができます。日本武尊命は第12代景行天皇の御子で、第14代仲哀天皇の父です。熊襲征伐や東国征伐をしたとされる英雄的人物です。東国征伐で関東をぐるりと巡っているので、関東各地に多く祀られています。特に、奥多摩秩父から信濃方面の山々では、日本武尊命を道案内したとされる白狼との伝説が受け継がれています。

こちらは奥宮遥拝所です。天気が良くて素晴らしい眺めでした。多くの方が記念写真を撮っていましたが、逆光で顔が真っ黒な写真になったと思われます。遥拝所なので、お賽銭箱があってここから遥拝できるようになっています。

この階段を下ると、随神門が見えます。三峯神社の象徴的な景色ですね。奉納された石灯籠が良い味を出しています。昔は表参道を使って参拝に来ていて、現在の表参道はこの階段を上がったところにある遙拝所に着くのです。表参道から随神門を通って境内に入るという順路だと思うので、坂を下るように境内に入ったのでしょうか。それとも、参道の開発によって境内を整備して移設など行って、昔と今は全然違うのでしょうか。

などと考えている間に随神門に到着です。沢山の方々が手前から写真や動画を撮っています。近づくと写って邪魔してしまいますから、なかなか近づけません。意を決して迷惑御免で近くへ行きます。この随神門はそもそも仁王門で、神仏習合の時代の産物として有名です。左右の狛犬はもちろんお犬様(ニホンオオカミ)で、黄色い前掛けをしていました。

次に本殿にお参りに行きます。平日でしたが紅葉時期なので、本殿の周辺は人がたくさんいました。お参りの列に並びます。この青銅鳥居は弘化4年(1845年)に造られたものて、ここでも眷属はお犬様。狼というよりは犬で、ポインターやセッターのような体型です。

白い手水舎です。色彩が見事というか、ド派手です。こういうのを極彩色というのでしょうね。途中で数えるのをやめてしまうほどの龍が彫刻されていました。嘉永6年(1853年)の建造だそうです。これまで様々な手水舎を見てきましたが、美しさとゴージャスさでは群を抜いています。

安政4年(1857年)に造られた八棟燈籠という木製の燈籠です精緻な彫刻が特徴で6mあるそうです。三峰神社日本武尊命をお祀りしている印象が強いですが、そもそもは日本武尊命が伊弉冉尊イザナギ)と伊弉諾尊イザナミ)をお祀りしたのが由緒ですので、主祭神伊弉冉尊伊弉諾尊です。

本殿前の左右にご神木があります。ご神木の横に狐のようなスリムなお犬様がいます。日本武尊命は主祭神の二神の他に、東征の際に道案内をしてくれた白狼(ニホンオオカミ)を信仰の対象として祀っています。このような山の上の神社に必ず現れる役小角奈良時代にやってきて以来、修験道の拠点として発展します。平安時代になると、弘法大師が自作の十一面観音像を安置する堂を建立し、仏教色が強まります。その後室町時代に入り足利氏に反旗を翻した新田義興、義宗を匿ったために寺領を没収され、140年もの間荒廃しました。

拝殿の中ではご祈祷を申し込んだ方々が参集していました。地域の方々ばかりではないと思うので、わざわざご祈祷を受けに来られたんでしょうね。拝殿も極彩色でとても美しいです。荒廃した三峯宮でしたが、文亀2年(1503年)熊野修験道の行者月観道満という方が全国から寄進を集めて復興します。それから、京都の天台系の修験道の聖護院の坊門となり、観音院高雲寺という名称で関東総本山のような位置づけとなります。

こちらは、数年前に突如拝殿前の床に龍の姿が現れたと話題になったものです。ん〜。私的には「鰯の頭も信心から」に近いのかなと思います。天台系修験道の色濃い、神仏習合の寺院であった三峰山観音院高雲寺ですが、江戸時代には全国から参拝者が集うほどの隆盛を迎えます。

明治時代に入って神仏分離令で寺院要素は切り捨てることになりましたが、今でも神仏習合の痕跡が境内に見られます。ちょうど私がご祈念を終えたところで、拝殿内のご祈祷が始まりました。

こちらは拝殿を横から見た写真です。拝殿の奥に本殿があります。すべて漆塗りになっていて、極彩色の装飾と朱塗りの壁が眩しいほどに映えます。現世ではない特別な場所にいる気分にもなりますが、無事にお参りもできたので、境内を見学していきましょう。

まずは本殿の右側のエリアを探索します。最初にあったのが神楽殿です。この神楽殿こそ、朱塗りで極彩色の装飾を施し、きらびやかであるべきでは? と思いますが、なぜかこのような生成りの吹きさらし感溢れる舞台になっています。

こちらは祖霊舎です。赤と黒は引き締まりますね。本殿の横にありました。三峯神社の関係者の御霊が祀られています。

国常立神社です。日本神話の最初に登場する国常立命をお祀りする神社です。ここから右側には摂社末社がズラリと並んでいます。その全てにひとつずつお参りをしている方もいらっしゃいましたが、私は眺めただけで満腹になりました。

こちらは日本武神社です。三峰神社を創建した日本武尊命をお祀りしています。

こちらは祠付で丁重に祀られています。天照皇大神豊受姫大神をお祀りする伊勢神宮です。やはり伊勢は特別なので、こちらだけはお参りするという方々が多かったです。

伊勢神宮の隣からズラッと神社が並びます。左から名称と御祭神を紹介します。珍しい神社だけ簡単に解説します。

月讀神社(月夜見命)

猿田彦神社猿田彦命・天宇受賣命)

塞神社(八街彦神・八街姫神・久那斗神)道の分岐を守護する、いわゆる道祖神です。

鎮火神社(ひふせじんじゃ、火産霊命・水速女命・埴山姫命)火の神、水の神、地の神を祀っています。

厳島神社市杵島姫命

杵築神社(大国主命事代主命

琴平神社(大物主命・崇徳天皇

屋船神社(やふねじんじゃ、屋船豊受姫命豊受姫命ですので、五穀、食物の神です。屋船と付くことで衣食住の神とするそうです。

稲荷神社(宇迦之御魂命)

浅間神社木花咲耶姫命

菅原神社(菅原道真

諏訪神社建御名方命

金鑚神社(天照皇大神素盞嗚命日本武尊命)

安房神社天太玉命)占いや神事の神様です。当ブログで紹介した武蔵御嶽神社にふとまに場という占い場がありましたね。

御井神社(みいじんじゃ、水速女命)

祓戸神社(瀬織津姫命・速開都姫命・気吹戸主命・速佐須良姫命)お祓いの神様。当ブログの布多天神社の回に登場しましたね。

東照宮です。家康公を祀っています。この摂社末社はそれぞれに理由があってこの三峰神社に祀られていると思うのですが、その辺の説明があれば嬉しいですね。ただ、端から順番にお参りするよりも、何の神様でどういう経緯でこちらに鎮座されているかが分かれば、祈りの中身も違ってくるでしょう。

また同じ型の神社が3つ。

春日神社(武甕槌命天児屋根命・祝主命・比売神

八幡宮誉田別命息長帯比売命比売神

秩父神社八意思兼命・知知夫彦神)

最後に山の神様。大山祇神社があります。左から右に名だたる神社を受け流し、最後に山の神様に、今日の表参道を無事に歩けたこと、これからも無事に登山を楽しめるようご記念しました。

本殿の左のエリアに向かいます。こちらは興雲閣という宿泊施設です。現代では日帰りで来れる三峰神社に泊まろうという人がどれほどいるのかはわかりませんが、あえて泊まってみると良い体験になるでしょうね。この、興雲閣の奥に鐘楼があるのですが、一般には見ることができないのか、たどり着けませんでした。神社に鐘楼というのはなかなが珍しいです。

こちらは小教院という建物で、神仏習合時代には本堂だったそうです。現在はコーヒーハウスになっています。

さらに進んでいきますと、縁結びの木があります。この祠の上あたりに、ヒノキとモミの木が寄り添って立っているので、夫婦杉のような扱いになっています。

こちらがその縁結びの木ですが、たしかにぴったりくっついて立ってますね。

縁結びの木を通り過ぎてしばらく進むと、御仮屋神社があります。お犬様をお祀りしている神社で、ここは他の境内社とは違って鳥居と参道付きとなっています。

犬を飼っている方などはぜひお参りしておきたいですね。日本武尊命の道案内をした山犬は、三峰山の御祭神の眷属とされていましたが、その後は信仰の対象=大口真神様として祀られています。お犬様は秩父の深い山中に潜んでいるために、ここを祭事を行うための仮の社=御仮屋としているのです。

私は犬ではなく猫を飼っていました。愛猫は既に亡くなっていて、年齢的健康状態を考えると、もう動物は飼えないと思っています。それでも犬猫の殺処分ゼロを願うひとりして、何かできればという思いはあります。大口真神様に全ての犬が人と一緒に暮らせるようにお祈りしました。

見事に柿が並んでいます。ここは、お犬茶屋という茶店的なお店ですが、この日は休店日のようでした。標高千メートルを超える山中にある神社なので、遠くにある神聖な場所という感覚ですが、道路もバスも整備されていてアクセスは良いです。結構賑わっていますがお店が休んでいたりすると心配になります。

ここから奥宮へ向かう参道が始まります。だいたい1時間ほどで到着できますが、山道なので一応ちゃんとした靴があった方が良いです。今回は奥宮にも訪問しています。詳細は特別企画「山+神」に掲載していますので、ぜひご覧ください。

紅葉シーズン真っ只中で、境内は賑わっていました。バス停にはまずバスに乗り切らないだろう人数が列を成していました。とりあえず並んでいると、バスは増発のようで2台当時にやってきました。それでも座ることができず満員状態で、うねうねの山道を吊り革に掴まって進むことに。表参道〜奥宮を歩いてかなり疲れた足腰を最後までこき使う羽目に。三峰神社は想像以上に美しい神社で、また違う季節に訪れてみたいと思わせる雰囲気がありました。

 

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