広い敷地にたくさんのお社やお堂がある寺社を選んでみました。見て廻るだけで時間がかかるので、観光にも良い感じです。できれば、たくさんあるお社やお堂にどんな神仏が祀られていて、人々が何を願ってきたのかを知ると、良い体験になると思います。また、人が集まる大きな寺社は縁日や年中行事も大掛かりになるので、その日に合わせて訪問するのも良いと思います。
目黒不動尊は不動尊信仰なので成田山の系列で真言宗寺院なのかと思いきや、天台宗の寺院であり成田山とも関係ありません。というよりも、境内を見渡すと、仏教なのか神道なのか修験道なのかよくわからないミックスゾーンとなっています。
とにかくたくさんの堂宇があるのですが、中央の階段を上がると鳥居があります。この鳥居は山王鳥居というタイプで、日吉神社系の特徴です。日吉神社の総本社は比叡山の日吉大社ですから、天台密教と神道の習合を表す鳥居なのです。不動明王が安置されている本堂の裏側には森があるのですが、四天王に囲まれた結界の中心に大日如来が鎮座しています。そしてその結界の更に奥、境内の最深部に地主神を祀るお社があります。
こちらに安置されているのは神変大菩薩、つまり修験道の開祖とされる役小角(役行者)です。仏教では菩薩と称して祀りますが、役小角自身は僧侶ではなかったとされています。天台宗や真言宗などの山岳信仰と習合した仏教では、欠かせない存在となっています。
普段は観光スポットというほど人も多くなく、周囲も門前町というほど特化していないのですが、縁日やお祭りの日はおおいに賑わいます。今年アニメ化されて、壮年世代の男性を密かに悶絶させた「僕の心のヤバイやつ」は目黒区が舞台となっていて、初詣シーンに目黒不動尊が登場していました。雑踏が苦手な方は平日に訪れると、ゆっくりじっくり見学することができます。
靖国神社は東京では明治神宮に次ぐ2番目に広い敷地を持つ神社です。お祀りしているのは、日本のために戦って亡くなっだ人々です。九段下から長い境内を歩いて拝殿に向かうのですが、他の神社のように境内社として稲荷神社などの日本神話の神を祀るということはありません。境内には近代日本が経験した戦争に関するモニュメントがたくさん建てられています。
中でも私が素晴らしいと思うのは、過去にも当ブログでご紹介しましたが、「さくら陶板」という桜の花の形をした陶器の展示です。これは47都道府県それぞれの土地の土を用いて、地元の陶工によって製作されたものです。各都道府県で色味や質感が違っていて、それぞれの特色が際立っています。神風特攻隊で敵の戦艦に自爆攻撃をして亡くなっだ人々は、「靖国で会おう」と言い合って恐怖を克服したそうです。だから彼らの魂は、遠き南の島から靖国神社に戻って来ていると信じたい。そんな方々の魂を癒やすために、故郷の土と日本の象徴である桜でもてなすというのは、本当に素晴らしいアイデアです。
社殿を過ぎて更に奥へ行くと、遊就館という資料館があります。戦没者の遺書や遺品や遺影が展示されている他、歴史の解説や実写の映像などもあって戦争について学ぶことができます。ただ、戦没者を神格化している立場からワンサイドに語る歴史なので、かなり右翼的に感じられます。知人が「戦争を美化している」と激怒していましたが、美化しているのは戦争ではなく、英霊なのだというコンセプトですね。靖国神社はどうしても隣国から外交の道具にされてしまうのですが、本来はとてもナショナルというかパーソナルなことで、日本人が日本に生まれて今生きていることの意義を感じさせられる場所なのだと思います。
浅草の観光には欠かせない浅草寺です。というか、雷門から仲見世通りの雰囲気は、誰もが知るJapanの象徴ですね。浅草寺は東京都で最も古い寺院とされています。浅草観音の異名通り、そもそもは観音信仰で近年まで天台宗に属していましたが、現在は独立して聖観音宗の本山となっています。浅草寺のような寺院には、所属は関係ないように思います。年中行事も多く、一年中絶えることなく賑わっています。
雷門から仲見世通りを通って、本堂前の常香炉で煙を浴びて本堂にお参りして、おみくじ引いて、さてお土産でも見に行きますか? というのがよくあるパターンだと思います。しかし、浅草寺にはたくさんの境内社や仏像がありまして、どんな願いでもそれに対応する仏様がいらっしゃると言われています。本堂の左側に西境内と呼ばれるエリアがあるのですが、そこにたくさんの境内社が集中しています。ピンポイントで自分の悩みを解決してくれそうな仏様を探してみるのも、楽しいかもしれません。
西境内以外にも、仏像やら石塔やらたくさん建っています。浅草寺の五重塔は江戸四塔とか江戸六塔に選ばれる象徴的なもので、現在でも浅草寺のシンボルのひとつとなっています。浅草寺の鐘楼は「時の鐘」と呼ばれていて、松尾芭蕉の「花の雲 鐘は上野か浅草か」という有名な句にも登場します。浅草は観光地として見るべきものが多すぎて、浅草寺を隅々まで歩いて回る時間が無いかもしれませんが、5円玉を30枚くらい用意して、片っ端からご縁を結ぶなんてことをやってみてはいかがでしょうか?
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