稲荷山コース編

火渡り祭の日、せっかくなので高尾山に登りました。これまで当ブログでは1号路、4号路、6号路をレポートしてきました。今回は稲荷山コースです。数字表記の他コースに比べて、稲荷山コースだけ呼び名が違います。それが何故かは分かりません。

稲荷山コースは山頂まで売店がありませんので、飲み物や行動食の無い方は清滝駅周辺で調達できます。売店だけでなくトイレも無いので、ケーブルカーの清滝駅で済ませておくのが良いです。準備が整ったら、6号路と同じく清滝駅の左の通路を進みます。

すると、すぐ左側に稲荷山コースへの入口があり、分岐して橋を渡ります。ケーブル駅の喧騒冷めやらぬ間に、山の中へ入っていく感じです。分岐には頂上まで3.1kmの表示があり、山頂までの目安時間は90分とのことです。

稲荷山コースは2023年頃まで大規模に改修工事が行われていて、登山道は至れり尽くせりの歩きやすさです。説明によると序盤は上り坂とのことでしたが、大変さを感じる場所はありませんでした。個人的な感覚ですが、1号路の方が急な登りに感じます。高尾山の登山道の中で最もハードなコースとの説明ですが、それは改修前の話かもしれません

旭稲荷に到着しました。お社の中から伏見稲荷と書かれたお札が飛び出していました。神使のお狐様は、尻尾まで防寒着が着せられています。確かな由来は分からなくても、いつからかここにあって、ここを通る人々に守られてきた神様ですね。

お社の前には一応境内のような広場があって、石灯籠とその奥には石の手水鉢がありました。休憩するにはスタート地点から近すぎる気もしますが、ベンチなどを整備するとここも人で賑わうようになるでしょう。

石灯籠の中を覗いてみると、「なんだこれ?」なものが……。

登り始めなので、一定時間は休憩しないで体を登山モードに慣れさせます。登りですがそれほど大変ではなく、後ろでマダムたちが様々な話題で会話を楽しみながら登っていたので、その程度の登り道です。

マダムたちのお喋りは本当にマシンガントークと呼ぶにふさわしく、息継ぎなしでよくそんなに喋れるなぁと感心します。病院の話、スーパーの野菜の話、アメリカの戦争の話と、高尾山の山中をサンマルクに変えるがごとくトークをしていました。凄い体力です。

手入れの行き届いた山道を歩いていて思うのは、これで登山と呼べるのかということです。手入れの恩恵を大いに受けて、楽して登らせてもらっているのですが、そもそも山に階段なんて無いので、ズルをしている感覚になってしまいます。

ここは稲荷山の山頂の展望デッキです。そもそもここには東屋があったのですが、なんということでしょう、開放感のあるお洒落な展望デッキに生まれ変わりました。まだ登り始めて1時間も経っていませんが、ここで腰を下ろして水分補給しました。

良いお天気で、展望デッキからはスカイツリーまでしっかり見えました。標高は高くありませんが、こうして見える景色は山の中という感じがします。電車を降りて一時間も登らないでこの景色が望めるというのが高尾山の人気の理由なのでしょう。

水分補給したらすぐ出発。なだらかな尾根道を歩きます。道幅も広く気持ち良い空間です。シャツの上にフリースを着て、その上から薄いダウンを着ていましたが、既にダウンはリュックの中です。朝のひんやりした空気の中、日の温かさを感じながら歩きます。

途中の休憩スペースです。全行程を考えると、ここで休憩を取るのが時間的にバランスが良いと思います。実際多くの方が腰を下ろしていました。全体で90分の道のりなので、休憩なしでも良いと思いますが、休憩も山の中の楽しみです。持参した行動食や飲み物を取りながら足を休めるのも、心地良い時間の過ごし方のひとつです。

なるべく階段の無いところを選んで写真を撮ってきたのですが、実際にはこのように( ↑ )登山道には階段やステップが敷き詰められています。これが、歩くのに危険な部分だけではなく、ほとんど全面的に木材のステップが施されています。必要な場所を選定するのが面倒なので、もう全面に敷いてしまえ、というようなヤケっぱちの施策のように感じました。

山頂の少し下で山を一周する5号路と交差します。ここから山頂までは長い階段になります。山頂から見下ろすと、これを上がってくるのは嫌だなぁと思わせるほど長い階段で、ちゃんと数えた訳ではありませんが、100段ごとに数字が書かれていたので、そこから推測すると240段くらいあると思われます。

角度も急です。譲り合わずにすれ違えるほど幅が広くないので、後ろから来る人のプレッシャーを感じながら登ります。幸い私の後ろは大きく空いていたのですが、それでも気になってプレッシャーを感じてしまいました。気の小さな私は結局ノンストップで一気に終点まで登りました。

3.1km/3.1km つまり、稲荷山コース完歩です。ここから高尾山の頂上ということです。90分の予定でしたが、60分で山頂に到着しました。

山頂から見下ろす稲荷山コースの最後の階段です。階段を登っている間は後ろに気を取られているものの、余計な考え事が消え、一歩一歩登ることだけに集中していたように思います。階段を登ることを仕事や人生に置き換えて、教訓めいた話を語るのも一興ですが、本当に何も考えずに登ってしまいました。

山頂から見える景色をバックに、写真撮影をする方々がたくさんいらっしゃいました。雪化粧をした富士山が美しいです。実物の景色は写真には写らない温度や風や音が加わって、心の内側に届くように感じます。

日曜日の昼の高尾山の頂上にしては空いています。お昼時なので皆さん思い思いに食事をして過ごしていました。外国人観光客も多くて、渡航自粛のはずの中国語も飛び交っていました。私も座れる場所を見つけて、持参したおにぎりを食べました。

頂上から1号路を下って薬王院に向かいました。大本堂ではちょうど護摩祈祷が終わったところで、行列の最後尾で佐藤秀仁貫首が観光客にお辞儀しながら歩いていました。私は毎日車を運転する仕事に就いていますので、交通安全は収入に直結する一大事です。毎年火渡り祭のタイミングで古い御守りをお寺に納めて、新しい御守りをいただいています。

こちらは大師堂の周囲にある四国八十八ヶ所お砂踏み場です。お遍路は魅力的ですが、おそらく私の生涯にはお遍路をする機会は訪れないでしょう。私の父は新興宗教の信者だったので無関係でしたが、祖父はお遍路や西国三十三ヶ所巡礼を完遂しています。自分ができない状況を思うと、改めて祖父の凄さを思い知り尊敬します。

大師堂の隣には聖天堂があります。歓喜天(聖天)がご安置されています。日頃は扉が閉ざされ御簾が下がって、厨子の扉も閉じて秘仏となっていますが、年に一度、9月に御開帳されるので、一度はお参りしてみたいと思っています。歓喜天は象の頭と人の身体を持つ仏教の守護神です。単身と双身の像がありますが、薬王院の歓喜天はどちらなのか私は知りません。歓喜天には諸説ありますが、荒ぶる悪神が十一面観音菩薩によって善神となって様々なご利益を与えるとされています。薬王院の本尊である飯縄大権現は、5つの神仏が合わさったご利益を持つ神仏習合の神と言われています。その5つの神仏のひとつが歓喜天なのです。都市伝説のように語られている話では、歓喜天はそもそも悪神だったために強大な力を持つので、ご利益も大きいが裏返ってマイナスの力も大きいと言われています。

薬王院の参道を逆行してケーブルの高尾山駅まで下りてきました。十一丁目茶屋の隣にある見晴台から見える景色です。ここからは山の景色と街の景色が見えます。最近はここからケーブルカーやリフトで下りるというのが私の定番です。いつか大きな病気をして体力が衰えても、ここまでなら電車とケーブルカーで来ることができます。ただその時に高尾山に行きたいと思うかどうかはわかりませんけど……。
ーーーーーーーーーーーーーーー
