江戸時代、庶民の間でも遠路はるばる旅をしながら有名寺社に参拝することが流行していました。特に善光寺や伊勢神宮は有名ですね。参拝者を相手に門前町が形成され、旅籠屋や料亭や蕎麦屋、団子屋など、寺社を中心に町中が賑わっていました。そんな東京の門前町に都市化が訪れると、そこは住民の生活空間となり、スーパーやコンビニができて、銀行や不動産屋やファーストフードのチェーン店が溢れます。生活はどんどん便利になっていきますが、門前町独特の雰囲気は失われてしまいます。
さて、そんな都市化した東京において、私が独断で選んだ「古き良き門前町の姿を今に残す寺社3選」をお届けいたします。寺社そのものの歴史や魅力もありますが、ここで示す3選は、寺社の魅力を倍増させる魅力的な門前町があり、東京都を代表する観光スポットとなっています。
都市化で門前町が消えていくという説を、逆側から立証するのが深大寺の門前町です。深大寺は京王線からもJR中央線からも離れていて、交通手段はバスかタクシーになります。そんなアクセスの不便さが逆に功を奏して、門前町にはスーパーもコンビニも銀行もファーストフードも一切ありません。これは交通の便だけでなく深大寺が景観を守っているのかもしれませんが、そのために風情ある通りが整備されています。
深大寺は東京都で2番目に古い寺院で、天台宗の別格本山に挙げられる古刹です。国宝仏の釈迦如来像も素晴らしいですが、秘仏となっている元三大師像は度肝を抜く迫力です(いつ御開帳されるかわかりませんが)。そんな深大寺の茅葺き屋根の門前に、二十軒ほどの門前蕎麦屋さんが立ち並んでいます。深大寺の隣には都営深大寺植物公園があり、セットで訪れると半日過ごせる観光客スポットとなります。もちろんお昼は深大寺蕎麦ですね。深大寺はそもそも深沙大王という水神様を祀ったことが創建の由緒で、付近は湧き水を湛える池や水路が流れています。水と緑に囲まれて、美味しいお蕎麦をご堪能ください。
日蓮宗題経寺とは、つまり柴又帝釈天のことです。駅前に「男はつらいよ」の寅次郎とサクラの銅像が建っていて、そこから題経寺までの間に 映画に出てくる商店街の町並みを見ることができます。ちなみに映画で寅さんの実家のお店のモデルになったのは「高木屋老舗」というお店です。目の前に行くと、ああ、ここだ! とわかりますよ。草だんごが評判だそうです。
帝釈天は非常に美しい境内で、帝釈堂と本堂の間を奥へ行くと、欅材の彫刻ギャラリーと素晴らしい日本庭園を見学することができます。有料ですが、安いのでお得感があります。帝釈天から更に江戸川方面に進むと「葛飾柴又寅さん記念館」がありますので、セットで観光する方々が多いのではないでしょうか。葛飾柴又は東京都で唯一「国の重要文化的景観」というものに選ばれていますが、そういった称号がどうでも良い程に、この街は魅力に満ちています。
一年中いつ訪れても賑わっていないときが無いという東京のシンボルです。雷門から仲見世通りの雰囲気は、世界で最も有名なJapanの景色のひとつでしょう。仲見世通りもさることながら、その周囲にもいくつもの商店街があって、周辺数キロに渡る浅草の町そのものが巨大な門前町となっています。
浅草寺は東京都内で最も古い寺院となっています。地域の人々と共に紡いできた伝統行事も毎月のように行われています。当ブログでも「温座秘法陀羅尼会」という珍しい法会をご紹介しました。外国人観光客が増える政策方針が続くでしょうから、仲見世通りもこれまで以上に外国人が集まると思います。近頃は女性だけでなく、男性も着物を来て歩いている方が多くて、日本文化を満喫していただけているようです。
神奈川県なので選外になりましたが、川崎大師平間寺の門前町も風情があります。こちらの名物は飴を切る包丁のカンカカンカンという音ですね。おそらく在庫が十分にあるときも、観光客へのサービスで音を響かせてくれています。
川崎大師は真言宗智山派の大本山で、お正月の初詣の人出は神奈川県で一番です。ゴールデン・ウィークに様々なイベントを行っていて、当ブログでも柴燈大護摩供(火渡り)を訪れた際にレポートしました。ひとつひとつの堂宇にただ観るだけではない要素があって、じっくり手応えのある参拝ができます。
ーーーーーーーーーーーーーーー