寺社探訪

寺社探訪とコラム

「山王祭(神幸祭)に行く」

江戸三大祭のひとつ、山王祭に行って参りました。と言っても山王祭は6月6日から6月17日まで様々な行事が行われますので、そのほんの一部を観てきたということですけど。この日は6月7日で、神幸祭という山王祭のメインイベントの1つが行われる予定です。神幸祭は、日枝神社を朝8時前に出発した行列が各氏子地域を練り歩き、17時頃に日枝神社に戻って来るというものです。ポイントとなる場所に立ち寄りながら進むそうで、見学しやすそうな皇居前広場に行くことにしました。

祭りと言えば各氏子地域の方々が、喧嘩腰の気合で神輿を担いで渡御するのを想像しますよね。先月行われた浅草の三社祭も凄かったです。山王祭でも各町の神輿の渡御は行われます。7日の夕方から9日まで、京橋・日本橋エリアで神輿の渡御があります。コロナの関係で6年ぶりとのことで、担ぎ手さんたちは気合入っていると思います。日本橋界隈の各町では、山王祭が近づくと、各町の目立つ場所に、神輿を安置するためのよしず囲いの御仮屋が建ちます。即席の神社のようで、街の雰囲気がガラッと変わります。

さて、私は上京して25年以上経ちますが、皇居前広場に来るのは初めてです。お祭りの観衆は徐々に集まりつつある段階で、まだ時間がありそうなので、少し散歩してみました。

ここは坂下門前で、右に見えるのが宮内庁です。坂下門前で行事が行われます。日枝神社江戸城の守護神ですから、かつての山王祭では徳川将軍家の上覧が恒例だったそうです。現在の皇居の主は天皇なので、お出ましはありません。

丸の内のビル群は私にとっては思い入れの強い場所です。歴史ある重厚なビルが並んでいる様子が好きで、若い頃には写真や動画を撮りに来たり、丸の内仲通りを舞台に短編小説を書いて、コンペに応募したこともあります。

こちらは日本の政治の中枢です。いつも思いますが、このあたりをミサイル爆撃されたら日本は終わってしまいますね。首都機能を他府県に移す話はどうなったのですかね。

かつて、令和天皇の即位を国民が祝うイベントがあったのですが、その時に天皇皇后両陛下がお出ましになった橋がこちらです。なんだか、闇夜の中ライトに照らされて並んで立っているのが不思議な感じでした。すぐ近くのステージでイベントが行われていて、安倍総理三権の長や各界要人もステージ上にいるのに、天皇皇后はギリギリ譲歩してこの橋まで。というのが私的には興味深かったです。

神幸行列が皇居前広場に到着しましたが、坂下門前までやってくるのは限られた方々のようです。馬が何頭か来たのですが、馬の休む場所や飲み水を用意してないとかで、関係者の女性が怒っていました。

私の真後ろで馬が4頭ほど休んでいて気になるところですが、儀式が始まりそうです。外国人観光客だけでなく、日本のほとんどの方も、何をしているのか分からなかったと思います。できれば、音響設備を使って儀礼の解説を入れて、周囲の見物の方も儀式に参加させて欲しいなあと思いました。外国の方にも、せっかくですから日本の伝統文化への理解を深めていただきたいです。

神輿も入ってきました。無言かつ無音で入ってきたので、異様な感じでした。一之宮から三之宮までを横に並べて、その前に御幣(みてぐら・ごへい)と神饌(しんせん)が置かれました。御幣も神饌も神様への捧げものです。お神輿には日枝神社の神様が宿っていますので、捧げる対象は神輿に乗った神様です。そして、左右に神職さんたちが向き合うように並びました。右に楽人(雅楽を奏じる神職)、左に祭主・祭員・巫女(儀礼をおこなう神職)が向き合っています。そうして儀式が始まりましたが、マイクも無く解説も無く、ほとんどの見物の皆さんは何かゴニョゴニョやっていたという印象だったと思います。

スマホがまた熱暴走して写真が撮れてませんが、皇居前広場坂下門前で行われた儀礼を解説します。

①祭主一拝:祭主が神前にて一礼します。一同祭主に倣い拝礼します。

②祓詞奏上:祭主が神前にて祓い詞を奏上します。一同低頭。

③修祓の儀:祭員が大幣を振って、祭壇、神職らを祓い清めます。

④献饌:お供え物を神に捧げます。具体的には酒の入った瓶子(徳利)の蓋を取ります。儀礼中は奏楽。

⑤祭詞奏上:祭主が神前にて祝詞(のりと)を奏上します。一同低頭。

⑥神楽舞:巫女が奏楽に合わせて舞います。

⑦玉串奉天神職の代表者、氏子の代表者が神前に玉串を捧げ、拝礼します。

⑧徹饌:お供え物を徹します。具体的には瓶子(徳利)の蓋を閉じます。儀礼中は奏楽。

⑨祭主一拝:祭主が神前にて一礼します。一同祭主に倣い拝礼します。

祭主一拝が終わったら、ぬるっと解散みたいな感じになりました。やはり解説アナウンスの必要性を感じました。皇居前広場の入口で待機していた方々と合流し、氏子地域への練り歩き行列が再開します。

私が東京で一番好きな通り、「丸の内仲通り」にやってきました。今は新緑が鮮やかですね。夏でも冬でも絵になるし、人々の物語が詰まってる通りに感じられます。ところで、歴史ある大企業が軒を連ねる丸の内仲通りですが、お昼休みの1時間を利用した綱引き大会があるのです。誰が考えたか知りませんが、トーナメント方式で数日間に渡って開催されます。同じ職場の仲間が勝ち進むと、ギャラリーも増えて盛り上がるでしょうね。話が逸れましたが、これから神幸行列が通るので、皆さん待ち構えていらっしゃいます。

神幸行列は総勢500名とのことですが、それぞれ順序や役割がしっかり決まっています。この白馬ほ役割は御神馬で、後ろの青い装束の方は弓や矛を持っています。

前が巫女さんで、後ろの笠をかぶった方々は童女とのこと。巫女さんも白い装束の方と、天冠を付けた金襴の装束の方がいますね。巫女さんは神楽を舞う役割を担っています。

こちらは二之宮と、その後ろが三之宮です。担ぎ手さんたちが掛け声を合わせて担ぐ神輿ではないので、非常に静かに悠然と進んでいます。無言となると、えっさほいさの掛け声が欲しくなります。ところで、この長い神幸行列を解説しようとたくさん写真を撮ったのですが、編集が追い付かず後日の公開になります。ということで「神幸行列コンプリート版」を近々公開予定ですので、ぜひご覧ください。丸の内を後にして、神幸行列は日本橋日枝神社に向かいます。更に銀座方面を通って永田町の日枝神社に戻ってきます。

ところで日枝神社のお祭りなので、神社の方はどうなっているのか、気になったので地下鉄に乗ってやってきました。見るからに、いつもの日枝神社ですね。私はお祭りだから屋台が立ち並んでいるのかと思いましたが、土地柄そうもいかないのでしょう。首相官邸の横ですからね。

境内に屋台が並んでいるのかな? と階段を上ります。嘘、エスカレーターを上ります。なんか、祭りの雰囲気が全く無いのですが、どういう訳でしょう。江戸三大祭りですよね?

境内には屋台もなく、いつもの日枝神社のようでした。本当にお祭り期間中なのかと問いたくなります。とりあえず、拝殿でお参りしました。それでも、探せば祭り期間の片りんはありました。お茶の接待をしていたり、生け花ギャラリーがあったりと、平常運転ではなかったです。

回廊にお捧げものが並んでいました。お酒が多いですね。米もありますね。ちなみに私たち葬儀業界の人間は、神饌(祭壇に飾る捧げ物)の並べ順にいつも頭を悩ませます。神社や神職さんの考えによって違いがあるからです。ちなみに先ほど皇居前広場で行われた儀礼では、5台の三宝が用意されていて、序列で言うと①米、②酒・塩・水、③鯛、④野菜、⑤果物でした。

この生け花は凄い腕前ですね。葬儀業界では型通りの飾りが多く、このような花の飾り方はほぼしないので、生け花の多様性を感じます。

日枝神社の御祭神は大山咋神で、神使は神猿(まさる)と称する猿です。「魔が去る」「勝る」と読むことができるので災厄除けの他、猿はファミリーで大きな群れを作るので、良縁成就や家内安全や子孫繁栄などの御神徳が有名です。膝の上にお酒を奉納して頂いてますね。

回廊の前に子どもが作った四角い提灯が奉納されていました。これも山王祭のイベントの1つのようです。

境内社の稲荷神社の千本鳥居はこの日も人気で、外国の方々や若者たちが良き写真を撮ろうと集まっていました。稲荷神社の階段を下りたところに、山王祭の看板が出ていました。神様は分霊してもその御神徳は減ったりせず変わりないとのことですが、今日の日枝神社は神様がお出かけ中のような雰囲気で、静かな時間が流れていました。行列が戻ってきて宮入りになると、一気に盛り上がるのでしょうね。行事としての山王祭はまだ続きますし、土日は日本橋界隈で各町会神輿の連合渡御があります。天下祭と呼ばれたお祭りの雰囲気を味わってみてはいかがでしょうか。

 

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