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「交通事故 加害者は参列すべき?」

交通事故で死亡した被害者の葬儀に、加害者側が参列することをどう思いますか? 死亡事故ですから、加害者が警察に拘留されている場合もあり、加害者の家族や代理人(弁護士)が参列することもあります。

被害者側の気持ちとしては、反省して償う気持ちがあるのなら線香の1本でもあげに来るのが当然の行いだと思うかもしれないし、どの面下げて来るつもりなんだと拒絶する気持ちが強いのかもしれません。そもそも顔も見たくないでしょう。整理のつかない理性と感情が交錯し、正解のない選択が行われます。

加害者側としては、被害者側が香典や焼香を受け入れてくれたら、反省や弔意の気持ちを被害者側が受け入れた事実証拠として、後々の刑事裁判を有利に進めることができます。どれほどの減刑効果があるのか分かりませんが、加害者にとってはプラスになりこそすれ、たとえ門前払いされてもマイナスにはなりません。そんな訳で交通事故の被害者のお葬式には、加害者がやってくるというのがかつては定番でした。

しかし、さすがに一般会葬者が弔問にやってくる時間帯に「私は加害者の関係者です」とわかるように参列することはありません。大切な人を亡くした際の感情のプロセスというものがありまして、衝撃→悲しみ→怒り→喪失感というように、感情が変遷していきます。一般会葬者の中には、事故によって突然大切な人の人生を絶たれたことに、怒りの感情を抱えている人も多くいます。そこへ命を奪った張本人(の代理人)が現れたら、大きなトラブルになってしまいます。

何でも例外があるので断言しませんが、大抵の場合は、突然前触れもなく通夜や葬儀の式場に現れるということはありません。加害者側から被害者の遺族へ通夜・葬儀に参列の意向を告げて、了承されたら参列するというのかが一般的です。遺族側も複雑な心境でしょうから、難しい判断になります。私の経験では、通夜・葬儀の時間を外して、一般参列者のいない時間帯にやってくることが多かったです。

加害者側と遺族が対面する場所などは葬儀社側が用意するのですが、なるべく穏やかにトラブルなく話ができるように心がけます。経験上、最少人数で短時間というのが良いです。感情的になって大きな声が飛び交うこともありましたが、葬送の空間を自身の感情で乱すことは、加害者も遺族も本意では無いはずです。葬儀社側も緊張して高ぶってしまう気持ちを鎮めて、努めて冷静さを保つように心がけます。乱されざる空間を能動的に作り出していく感じです。

ちなみに、交通事故死のお葬式では、葬儀費用を加害者に請求することができます。以前、隣の式場で巨大でド派手な生花祭壇が組まれているのを見かけましたが、伝わった話によると故人はニュースでも報道された交通事故の被害者でした。気持ちをお金に変えることはできませんし、どれだけ豪華にしても故人が蘇ることはありません。また、悪人だからと言って、どれだけ請求しても良い訳でもありません。それでも、加害者も遺族も、お葬式によって少しでも救われたなら……と思います。

 

(※ 写真はイメージのためのフリー素材です)

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