名称・寺格
萬吉山(ばんきざん) 宝持寺 松月院と称する曹洞宗寺院です。寺格は特にありません。
創建
創建は不明です。康生2年(1456年)に、千葉氏が千葉から赤塚城へ移り、当地にあった宝持寺を菩提寺として、名を松月院に改めたことが始まりとされます。
本尊
みどころ
整えられた美しい境内や各堂宇の佇まいが魅力の寺院です。芝桜の季節は山門までの参道が美しく彩られます。
アクセス
東京都板橋区赤塚8-4-9
東武東上線「下赤塚」徒歩20分
探訪レポート
芝桜の咲く頃に訪れました。こういう場所は季節が変わると全く違う印象の景色になるので、訪れる時期が重要ですね。ちょうど60代くらいの寺社巡りグループの皆さまと入れ違いになり、皆様は芝桜を目的にいらっしゃったようで、きれいに咲いていたことに満足されていました。当ブログでご紹介した乗蓮寺の東京大仏と共に「板橋十景」に指定されています。参道が一般道に分断されていて、ここの入り口を通らなくても中へ入れますが、石像群も見学しつつ厳かにお参りしましょう。
一般道を挟んで山門があります。「葷酒山門に入るを許さず」の大きな石碑が建っています。葷酒とは臭いのキツい野菜とお酒のことです。そういうものを口にして、寺院に入ってはいけませんよという意味で、曹洞宗寺院に多く見られます。
山門の中へ入ると、右手に柊の木があります。ここはだだっ広いスペースになっています。
左側は幼稚園です。味のあるお地蔵様が建立されています。「おててをあわせて おがみましょう」と書かれています。私は仏教系の学校に縁がない人生でしたが、仏教系の幼稚園はそこかしこにあり、仏教寺院の運営基盤のひとつになっている場合も多いと思われます。日本ですから、そこまで信仰にどっぷり浸かった幼稚園は稀だと思いますが、一般的な仏教系の学校は、やはり落ち着いた子に育つなどの効果があるのでしょうか。
もうひとつ山門があります。ここから内側は厳粛な雰囲気に変わります。平将門の末裔とされる千葉氏が房総で勢力を持っていましたが、康正2年(1456年)に房総から赤塚城に移り、その地にあった宝持寺を菩提寺にしたので、武蔵千葉氏の当主とされる千葉自胤が開基となっています。
こちらは宝篋印塔ですね。かなり古そうに見えましたが、どういう代物だかはわかりません。板橋区最古の宝篋印塔が松月院にあるのですが、それはこちらではなく千葉氏の墓地にあるものだそうです。
砲術家の高島秋帆が、現在の高島平あたりで砲術訓練を行った際に松月院を本陣にしていたことから、このような砲術型の碑が建てられています。高島秋帆は長崎の出島の町年寄で、オランダ式砲術を学んで諸藩に伝授していた人物です。
本堂の左側に豊川吒枳尼天(だきにてん)があります。稲荷信仰は日本人に広く多く普及したので、寺院や神社を問わず祀られています。京都の伏見稲荷大社から勧請した稲荷社を祀るところが多数を占めますが、仏教寺院ということで愛知県豊川市の豊川稲荷妙嚴寺から勧請した荼枳尼天がご安置されています。仏教以前のインドの神ダーキニーが仏教に取り入れられ、荼枳尼天は白狐に乗った女神の姿をしています。寺院内に鳥居が建てられている様子から、神仏習合の様子が伺えます。
本堂は禅宗らしい静かな佇まいです。本尊は釈迦牟尼仏坐像です。大きな墓地があり、檀家数も相当多そうですので、境内の整備は行き届いています。宝物殿や檀信徒会館も素晴らしい建物が建設されています。松月院から少し離れたところに赤塚大堂という阿弥陀堂があります。大同年間(806-810年)の創建で、板橋区最古だそうです。かつては大寺院だったそうですが、上杉謙信による小田原北条攻めの際に殆どの伽藍を焼失してしまったそうです。再建されることはなく、阿弥陀堂(赤塚大堂)を松月院が管理しています。他に鎌倉時代後期に創られた梵鐘が残っていますが、こちらは板橋区郷土資料館にあります。
こちらは松月院の鐘楼堂です。松月院の鐘楼というと、前述の赤塚大堂の梵鐘の方が有名なので少し調べてみると、赤塚大堂にも鐘楼堂があって、梵鐘が吊り下げられているのですが、資料には板橋区郷土資料館に保管されいるとあります。これは郷土資料館に保管されているものが本物です。
松月院で目を引くポイントは、やはり庭の美しさです。松月院ではガーデニングフェスタというイベントを行っています。「一休さん」のアニメを見てきた世代の方は、寺の庭の手入れは若いお坊さんがする仕事のように思うかもしれませんが、大抵は専属の植木屋さんが管理をしていることが多いです。松月院のように美しい庭がいつも保たれているような寺院は、ほぼ毎日に近い頻度で手入れしているのではないかと思います。そのおかげで訪問者は美しい庭に感動できるので、大変だと思いますが多くの人を幸せにする仕事ですね。同じ板橋区の東京大仏がある乗蓮寺は徒歩圏内というか、すぐ近くなので、セットで訪問する方も多いのではないでしょうか。特徴の異なる寺院ですので、その違いからどのような信仰がそこにあるのかを考えると、面白いと思いますよ。
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